2019年6月8日土曜日

高齢社会における資産形成に向けた課題は根が深い

青井ノボルです。

金融審議会 「市場ワーキング・グループ」による報告書が話題です。

金融庁がまとめた、人生100年時代を見据えた資産形成を促す報告書。
公的年金制度のみに頼った生活設計では、資産不足になる恐れを指摘。

「年金100年安心プラン」などのイメージから、公的年金のみで生活可能。
老後生活について、そのような誤解が一般的に広まっていることもあって。

年金だけでは2,000万円不足、という部分が大きな話題となっています。
この社会的な課題は奥深いものがあり、資産形成の重要性は高そうです。

この記事では、市場WG報告書「高齢社会における資産形成・管理」について感じたことを書いていきます。

2,000万円不足だと騒がれている

95歳まで生きるには、夫婦で2,000万円の金融資産の取り崩しが必要となる。
公的年金制度に全て頼って、平均的な生活を送るのは難しいということです。

年金給付をメインとした平均的な収入で、平均的な支出を賄うことは難しい。
その差額は月約50,000円で、65歳から30年間で約2,000万円と試算される。

ということで、年金収入に頼った生活設計だと毎月約5万円の赤字となる。
おおよそ上記の様なロジックで、2,000万円不足すると話題になりました。

退職後2000万円不足も 麻生大臣 資産形成考えて…

「年金100年安心プランだと言っていたはずなのに2,000万円も不足!」
話が違うじゃないかと叫んで、感情的になっている人もいるようです。

当たり前のことを当たり前に指摘した報告書

公的年金による収入だけでは足りないのが一般的なので、資産形成しましょう。
金融庁が発したいメッセージであり、WG報告書にもしっかりと書かれています。

ただこれは、当たり前のことを当たり前に指摘しているに過ぎないと感じます。
極めて現実的な指摘であり、もともと分かっていた話だと言うこともできます。

年金100年安心プランは元々、所得代替率は50%を維持するとしています。
現役時代の給与に対して年金額は半分以上にしましょう、という話です。

老後の支出は現役時代から2~3割減少するものの、足りないのは明白です。
公的年金だけで老後生活は大丈夫、というバラ色のプランではありません。

マクロ経済スライドがしっかり発動してない状況下で、将来の給付は厳しい。
公的年金制度が崩壊して給付ゼロになることはなくても、減額はあり得ます。

つまり、公的年金に全てを頼るという考え方は無理があるということです。

老後生活で平均的な支出を望むなら、自助努力で不足分を備えるしかない。
あるいは、質素な暮らしぶりで支出を抑えるというアプローチもあります。

いずれにしても、現実と向き合って自分がどう行動するかを考えるべき。
国に任せていれば万事解決する、という思考からは脱却すべきでしょう。

また一歩踏み出し、資産形成も視野に入れたほうが良いのだと思います。

持っておきたい基本的視点

WG報告書では、高齢社会を取り巻く環境変化についての現状分析を踏まえて。
個人と金融サービス提供者の双方で理解すべき基本的視点を提示しています。

資産寿命を延ばす

個々人の事情によって異なるものの、長生きした分だけお金が多く必要となる。
そして平均的な支出であれば公的年金だけでは不足することが想定されている。

重要なのは、老後生活で公的年金以外に必要なお金について自分で考えること。
人によって資産額や年金給付予定額は異なるので、自分で動かないと駄目です。

生涯に亘る計画的な長期の資産形成・管理の重要性を認識することが重要。
(引用元:金融審議会「市場ワーキング・グループ」報告書P21)

報告書に書かれている言葉ですが、まさにその通りなのだと思います。

個々人のニーズは様々

三世代が同居するサザエさん的な世帯が減り、単身や夫婦のみの世帯が増加。
また働き方も多様化しているなかで、終身雇用や年功序列も崩れ始めている。

一億総中流という日本社会から変化して、ライフスタイルが多様化している。
未婚化も進み、いわゆる標準世帯という考え方も合わなくなってきています。

模範解答的な人生という概念が無くなり、自分でライフプランを築き上げる。
そのために必要な考え方として、報告書では下記の視点を提示しています。

今後は自らがどのようなライフプランを想定するのか、そのライフプランに伴う収支や資産はどの程度になるのか、個々人は自分自身の状況を「見える化」した上で対応を考えていく必要があるといえる。
(引用元:金融審議会「市場ワーキング・グループ」報告書P24)

ここでも、自律的に自分の頭で考えていく重要性が示されています。

資産形成など自助の充実を

少子高齢化によって働き手が減少するのは明らかで、給付調整は避けられない。
現実と向き合いながら、老後に望む生活水準と収入とのバランスを考えておく。

そしていま何をすべきかということを、早めに考えておくことが求められます。
就労継続・支出の削減・資産運用など、自助の充実を図るべきだとしています。

「自助」という言葉を使うことは、勇気の要ることだったと想像します。
少し厳しい言葉だったので、ここに過剰反応した人も多かったようです。

ただ2,000万円とも言われる老後の不足分は、平均的な純貯蓄額よりも低い。
つまり、平均的な自助努力により賄える範囲内だと言うこともできそうです。

認知・判断能力の低下リスク

長寿化と認知症の人の増加という傾向は、統計的にはあるようで。
年齢を重ねるにつれて、認知・判断能力が低下するリスクはある。

リスクがあるというより、誰にでも起こり得ることなのでしょう。
これに対してどのように対応すべきかは、非常に重い課題ですね。

資産形成は重要だが取っ付きにくい

WG報告書では、現状課題と基本的視点に基づく対応策を提示しています。
個人・金融サービス・環境整備といった視点から、考えているようです。

具体的には、長期分散積立投資と計画的な取り崩しを推奨していて。
老後には取引関係を簡素化し、他者のサポートを得ながら対応する。

そのために求められる金融サービス、環境整備について言及していて。
ここに書かれていることは、資産形成をする個人でも知っておきたい。

知っておいて損は無い内容ですし、個人的には読むことを推奨します。

ただ、資産形成の必要性を感じない人にはWG報告書は取っ付きにくいでしょう。

とても大切な内容だからこそ、もっと広く知ってもらうにはどうしたら良いか。
更に言えば、正しく理解して貰えるにはどうしたら良いか、課題は根深いです。

金融機関に顧客本位を徹底することを求めるのは、当然ながら必要なこと。
ただそれ以上に、個人の金融リテラシーを高めなければ危険な気がします。

国や公的年金制度への過度な期待は捨てて、現実的に考えたいものです。

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